どうしてぼくはこんなところに

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[読書]初めて探偵小説を読んでドキドキした!臨場感が半端ない!ジョー・イデ「IQ」

 

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 次世代のシャーロック・ホームズだと話題の本。まるで映画を観ているような読書体験だった。読んでてハラハラドキドキして「やばい、やばい、どうなるの!?」って気になってページをめくるのがやめられないから、ほかのことが手に付かないっていう迷惑な本だった(褒めてます)。

 著者は日系アメリカ人。小説の主人公は黒人。舞台も黒人社会、そして治安のよろしくないストリート。日系ってことはアジア系なのになぜ黒人が主人公?ちゃんと描けるの?って思うんだけれど、実は著者は黒人社会で育っているからそのあたりの事情には通じているのだそう。

がっちがちのミステリーなのかと思ってたけどそうではなく、どちらかと言うとアクション。もちろん事件解決のための謎解きはある。ただ、レイモンド・チャンドラーフィリップ・マーロウシリーズのような基本的に気取ってて落ち着いたハードボイルドな物語ではないということだ。

物語の主人公は聡明な青年アイゼイア・クィンターベイ。その頭文字をとって人は彼をIQと呼ぶ、というわけ。職業は探偵…というわけではなくて何でも屋。

IQと呼ばれるだけあって彼は頭が良い。良い大学をでているというわけではない。その進路も十分あったけれどとある事情により高校を中退してこの何でも屋稼業に収まっている。

何でも屋稼業も順風満帆なスタートだったわけじゃない。結果として何でも屋稼業に収まったというだけで、それまで彼は様々なことを経験している。つまり彼は地頭の良さに加えて、経験というストリートスマートに分類されるタイプの人間だ。

そんな彼のもとに、人気ラッパーの護衛とという依頼が入る。誰かが彼を暗殺しようとしているというのだ。その犯人の特定も依頼内容だ。

物語はその依頼を中心に、アイゼイアの過去と現在が絡まり合う構成となっている。

そんな物語をかき乱すのがドッドソンという元ギャング。くされ縁でアイゼイアとつながっているが、性格は真逆、互いにそりが合わないことを自覚している。

ラッパーの護衛という依頼もドッドソンが持ってきたもので、2人で取り組まざるを得ない。アイゼイアは嫌がるが高額報酬は抗いがたい。

2人は売り言葉に買い言葉ですぐに口論になるほど相性は悪い。

果たして…というのがあらすじ。

 

相性が悪いということは、物事が噛み合わず、予定通りに物事が運ばないということだ。それはつまり、トラブルを招き読者をドキドキさせる。著者は映画のシナリオライターだったようで、この辺りの演出が上手い。すごくドキドキした。ほんとアクション系のハリウッド映画を観ているようだった。飽きない。

 

ぼくにとって本書が良かったのは下層の黒人社会が妙にリアルに感じられた点。

アイゼイアは将来有望な高校生で優等生だった。学校も彼に期待しているし、周りも彼に一目置いている。

そんな彼の人生が彼に非があるどころか、彼自身に関係のないところ、家族の問題で一転、暗転することになる。

そのセーフティーネットのなさというか、人生にミスではない不具合が1つあっただけで果てしなく落ちていく過程がいたたまれなかった。思わず涙がでた。

 

この物語はその逆境から立ち直る物語でもあるので、言ってしまえばバットマンに似たヒーローものといっても良いかもしれない。一度闇落ちしたアイゼイアという青年の成長と復活の物語でもあるのだ。

 

そして、黒人のリズムを感じられたのが良かった。物語に登場する人物1人1人の思考過程、会話を眺めることでアジア人や白人とは異なる彼らのリズムがスッと入ってきたような気がする。新人らしく伏線の回収も丁寧だった。

 

 

原著では3作まで続編が出ているらしい。邦訳はまだだけれど、どうしようかな原著で読もうかな。それとも次は黒人文学を読んでみようかな。

 

Righteous: An IQ novel (Iq Book 2)

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Wrecked (An IQ Novel Book 3) (English Edition)

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