どうしてぼくはこんなところに

冷静と情熱の間で彷徨う人のブログ

ほんの少しの間交わった人生の物語「場所はいつも旅先だった」

 

場所はいつも旅先だった (集英社文庫)

場所はいつも旅先だった (集英社文庫)

 

 著者の松浦弥太郎さんのことは恥ずかしながらこれっぽっちも知らない。文字列は見たことある。その程度。たぶん、村上春樹さんと同じ括りのカルチャー系の人なんだろうなと思っていた。

 あるとき、ドングリFMを聞いていたら紫原明子さん(@akitect)がゲスト回で松浦弥太郎さんについて話していた。

 

いわく、松浦弥太郎さんには身体中に旅先でいれたタトゥーがあるのだという。その出典がエッセイ「場所はいつも旅先だった」というわけだ。

 

それまで、ぼくは全然興味はなかったのだけど、全身にタトゥーがあるというギャップにいたく興味を引かれた。だって、こだわりある白シャツ+丁寧な生活というイメージだったから。正統派というイメージを持っていたから。

 

さて、それで肝心の内容だけれどとてもよかった。数えきれないほどの短編エピソードが収録されていてどこまで嘘かほんとかわからないけれど、語られている物語はどれも活かしていた。舞台がLAやNY、カリフォルニア、ロンドン、フランスとおしゃれな雰囲気漂うロケーションだからかもしれない。

 

 そして必ずといっていいほど女性が登場している。

思った通り、村上春樹的な孤独と世界観がちらつく。

 

20代の初めの頃はこういう世界はあまり受け付けなかった。

 

そういう青春を過ごしてこなかったし、いけ好かなかった。

 

見事なまでの嫉妬。

 

田舎から神戸にでてきて、都会というものを知り、さらに東京、そしてNY、ロンドン、カリフォルニア…。どこが一番優れているとか、マウントを取りたいとかいうのではない。

なんとなく劣等感があった。自分なりに必死でやっているのに、その頑張りを軽やかに越えていったり、その背後にぼくにはないコネがちらついている気がしたから。くやしかったし、生きてる世界が違うなと思った。そこに憧れたけれど、そうなれなかった。

彼らもそれなりに大変なことはあるんだろうけれど、ぼくのそれよりは全然ましだろうとも思っていた。

 

 それで、ぼくは今30を目前としたときに、この本を読んだわけだけど素直に良いと思ったし、淡々としていて余白が多い分いろいろ想像力が働くし、結構共感できた。

 

 思い返せば、ぼくもこの数年、国籍の異なるいろんな女性とデートしていた。著者と似たような経験もしていた。

 

ぼくの場合はベースは日本で、それは神戸や東京、たまに台北だったり、シンガポールだったりしたわけだけど、場所はいつも旅先とは限らなかったけれど、ぼくのありふれた人生にも、本書になぞらえると、いろんな物語が生まれていたし、生まれようとしていたんだなぁとしみじみと感じた。

 

終わった恋を良い思い出としてとっておけるのは素敵なことだなぁ、そんなふうに一皮むけたいものだと、旅先で過ごしている今、思う。