よく「ちょっと相談にのってくれませんか」と言われる人がいる。
正直かなり憧れている。ぼくも良き相談相手として結構うまくやれる気がしているから。
けれどざんねんながら、期せずして単独行動が多いぼくには友だちが少なければ、頼ってくる後輩なんてのもいない。
それでも、いつかそういう日がくるだろうと思っている。
敬愛する高城剛さんはたしか「突き詰めていくと、最終的にはやるかやらないかの2択になる」と言っていて、ぼくもそう感じてる。
それを踏まえて、ぼくのところに相談に来る人というのは、たぶんレールから外れたことをしようとしてると思っている人なんだろうと思う。ぼくは自由人に見られているらしいから。
そうなってくると、たぶんぼくに至るまでに、大学を卒業して就職、社会人3年目に結婚、子どもは2人、みたいな定番のレールの人生を歩まんとする人たち何人かへの相談を経ているはずなわけで、散々否定されてたどり着いた先がぼくのところ、つまりは、ぼくのところにやってきた時点で背中を押して欲しいだけなんじゃないかと思う。
そうなると、ぼくが言えることと言ったら「大丈夫だよ、失敗しても死にはしないから」くらい。だって否定されても諦めきれないってことは、本人が納得してないんだから早い段階で挑戦させて、結果がどうであろうと本人に納得してもらうしかないだろうから。
だから、とっととやっちまえばいいじゃんって考え方なんだけど、もう一つやった方が良い理由はある。
ここからが今日の本題、アナロジー。
ぼくはバイオ系が好きで、進化生物学だとかのバイオ系の本をよく読むんだけど、その中でスティーブン・ジェイ・グールド(生物学者、科学史家)は肉体の進化には付随現象の吸収がつきものだと語っている。
簡単にいうと、多くの肉体器官はその後の進化で派生してきた用途とは初めは違った用いられ方をしていたということ。
例えば、魚のヒレは爬虫類の脚になり、爬虫類の顎骨は哺乳類の内耳骨になり、爪はひづめになっている。翼は、最新の研究では、そのはじまりは求愛行動のための飾りだったんじゃないかと考えられている。鶏におけるとさかのように。始まりは長く太い腕毛だったのかもしれない。もちろん、実際に空を飛ぶようになるには他の適切な器官も同時に発達していなければならないけれど。具体的には中空の軽い骨、排泄物の重量節約処理の発達だとか。
そういう機能のシフトというのは、なにも長い年月をかけた生物の進化の世界だけの話じゃない。
ラジオはもともと緊急連絡用だったのが娯楽と暇つぶし用になったし、荷物を動かす車輪は時計の歯車になっている。インターネットだって軍事目的だったものが商用に開放されて現在にいたっている。
何が言いたいかというと、あらゆるものは潜在的な可能性に満ちているわけで、その潜在的な可能性は試してみないと顕在化しない。
やりたいことをやってそれがそのまま報われれば、もちろんそれはそれで良い。
けれど、たとえ報われなくても、思いもよらないところに別の可能性の扉が開く。ぼくにしたって、最初は司法書士になりたかったけれど報われなかった。それでも、なにか法律関係の仕事を、と思っていたら法務の仕事があり、そこから発展して今は知財の仕事をやっている。
そしてぼくは知財の仕事をとても楽しいと感じていて、あのとき司法書士にならなくて良かったとさえ思っている。
それもこれも、小さいけれど挑戦をし続けた結果のこと。失敗して閉じるのではなくて失敗しても拡げ続けた。
だから、なにかに迷ったらとりあえずやってみるという選択をすれば良いと思っている。たとえダメでも、早めに失敗しておけば納得できるし、次に進めるから。
なんてクサい話をしたいのだけど、ちょっとエラそうである。
まだまだ良き相談相手となる日は遠そうだ。
ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スティーヴン・ジェイグールド,Stephen Jay Gould,渡辺政隆
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進化への思いを馳せる本。
ちょっと小難しくてなかなかページは進まないけれど、読破できればばらばらのパズルが完成したようにいろいろつながり始めるような感覚を得ることができる。
- 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
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あまりにも有名な名著。「自然選択の実質的な単位が遺伝子で、生物は遺伝子に利用される乗り物に過ぎない」という主張が印象的。ぼくのバイオ系への傾倒はここから始まった。めちゃくちゃ分厚くて重たいけれど、ぼくはどこへ行くにも持っていって電車の中だろうが、待ち合わせのほんの少しの間だろうが、夢中になって読んでいた。 グールドをディスってた気がする。
上記2冊は、ユーモアなしなんだけど、本書はおもしろおかしく恐竜というものを、そして生物学的な考え方を語っているんだけど、ちょっと電車とかカフェで読むの危険かもしれない。
フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ジョナサンワイナー,Jonathan Weiner,樋口広芳,黒沢令子
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ガラパゴスでのフィンチという鳥の観察を通して、ガラパゴスの環境で生き残るために現在進行系で進化している様を見せてくれる名著。栄枯盛衰がある点にも注目。