メーカーの海外営業を曲りなりにやっているけれど、グローバル化というのは手間がかかって仕方がないように思える。その割に得るものが少ない。
いまどき、どの国にも同じ、あるいは似たような商材を供給する会社は存在するだろう。それをわざわざ海外から(うちの潜在顧客の場合は日本から)仕入れようというのにはそれなりの理由がある。
クオリティが凄まじいとか、自国内では生産されていないとか。
で、供給側としてぼくの扱っている製品に関して、拙く少ない経験から言わせてもらうとロングテールポジションを取れるかどうかがポイントだと思う。
商品の販売機会は少ないけれど、種類を増やして幅を広げたり、顧客の総数を増やしたりして全体として売上を上げるっていう戦略がうまくハマるかどうか、これがポイントであろうと思うんだけど、現状我が社の製品は絶妙にハマっていない。
製品自体はかなりユニークではあって製造できるメーカーはそれほど多くない。けれど、ラインナップが少ない。具体的には標準グレードしか販売していない。
この標準グレードっていうのはそれなりの工業国なら製造メーカーはいくらかあるし、もちろん中国だって製造してる。価格は安い。
実際、標準グレードでの海外からの引き合いはほとんどない。あったとしても最終的に価格面(製品価格 + 輸出コスト)がネックになって頓挫する。
引き合いがあるのは特殊グレード。
詳しいことは書けないので、スマホで例える。
スマホの防水で30mまで大丈夫だとか、防塵で砂漠でも問題ないとか、画質が際立って良いとかそういうものを求められている。
そもそもスマホである必要はないだとか、技術的に無理だというのもある。自国内の供給元がないから海外で探してるんだろうけれど。それでも、何度かテストをすればできそうだという案件もある。
こういう場合、うちはテストをさせるだけさせてダメだったらさっと逃げて、都合よく使われただけ…なんて損をしないために相手にもコミットを求める。具体的にはテスト費用をだしてもらう。
けれど、9割9分「テストを何度か経ればできると思うよ」 と伝えると、要はできないとわかると話はそこで終わってしまう。
これは簡単な話で、既に彼らの求める製品や技術を持っているところを探しているのだ。つまりうちは用済みで、他のメーカーに相談しているに過ぎない。メーカー側がグローバル市場にアクセスできるのと同じように顧客側もグローバル市場にアクセスして条件の良い供給元を探しているのだ。
毎度、そのパターンで案件が流れているぼくとしては、予め特殊グレードをラインナップに加えたい。特殊グレードということである程度のコストアップは付加価値の範囲内だし、そうすれば引き合いに対応できるし、それを何度か繰り返せばほんとの意味でロングテール戦略を取れてグローバルに存在感を示せる。製造量が増えれば生産効率が上がって単価が下がるから国外においても十分なシェアが見込める。
けれど、実際にその特殊グレードがどれほどの需要があるのかわからない以上、上層部はリスクを取って投資してともすれば在庫を増やすなんてことをしたがらない。というか、しない。まずは1つ目の案件を取ってから。それが上の判断。
そう、ぼくは卵が先か鶏が先かという問題に直面している。
ぼくとしては担当している以上、援護が欲しいからラインナップは増やして欲しいけれど、一方でその難しさも理解している。
価格が合うかどうかというがまずあるけれど、ガンガン特殊グレードのスマホを開発をしてラインナップを増やしたところで、スマホの時代がいつまでも続くとは限らないからだ。開発中に別の新しい何かに市場のトレンドがあっさり変わる可能性がある。そもそも例えば、水深30mまでOKのスマホを開発したとして、スマホである必要はあったのかGoProじゃダメだったのか。スマホユーザーのどれほどの人が水深30mまで潜るというのかという疑問もある。
事前にラインナップを揃えたところで、顧客の要求を満たせたところで、その先のマーケットが小さければ投資資金を回収できないわけで、つまり赤字事業になって、Too much Invested to Quit な状態になって、せめて赤字分は回収しようと深みにハマりかねない。
いやぁ。困るね、まったく。

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