どうしてぼくはこんなところに

冷静と情熱の間で彷徨う人の雑記ブログ

日本ポジティブ論のベースになるものを求めて

少し前にこういうのがツイッターのTLに流れてきた。

Uhh, a pie chart, I guess

(このチャートは実は前にも見たことある気がするが…)

とにかく、このチャートを基に日本がどんどん衰退してるという。

でもよく見ると別に日本だけが貧しくなってるわけじゃない。アジアのパイが大きくなってるし、ドイツやUKはほとんど変化してない。

 で、こういう「あぁ、もう日本はダメだよー」っていう悲観論はすごく良くバズる。

 

バブル崩壊後の失われた20年だとか言わたり、デフレがどうの、事実低成長で、超高齢化社会で、社会保障が、年金が云々…と良くないニュースを散々聞かされてきて、正直うんざりしてる。

もうそういうのはお腹いっぱい。

それに、そういうダメな日本でぼくは少なくとも後60年ほどの人生を送ることになるわけで、そうすると、少しでも良い生活をするにどうすれば良いのか、どうするべきなのかというのが気になるところで、悲観論だけではなくてその先が知りたい。

しかし、一方で楽観論に目を向けるとやりがいがどうのとか、思いやりがどうのとかいう、いかにも生産性を下げそうな消耗戦や「実は日本はスゴい国だー!」という謎の精神論に終始するのが多い。とてつもなく。

 

そんな中で、見つけたのがこれ。

 著者はマスターを2つ持ってて国連外資系金融会社を渡り歩いた後、OECDの東京センター局長を勤めてる人。

 

この経歴で、なぞの精神論は語らないだろうし、おもしろそうだったので読んだ。

タイトルに「国際比較統計でわかる日本の強さ」というのが入ってるからポジティブ論なんだろうと予想はできるんだけど、大雑把に言うと、これができないともうほんとに救いようがないよというようなニュアンスの内容だった。

 

比較統計なわけでいろんな国とデータを比べてるわけで、ここがこんなにできてないのにこれだけの数字を残せてるのはスゴいことなんだから、ここを詰めてきちんとやれば大丈夫っていう感じで課題を克服できれば、というか伸びしろはたくさんあるよというもの。

具体的には (就職氷河期世代の) 中高年は世界的に優秀な学業の成績を収めていたのだから、まだまだ新たに学ぶことができるしそのハードルは低いはずだからもっと活用できる、 “再教育” もできる、というのだとか、女性活用だとか働き方改革が語られている。このあたりはよく言われていることではあるし、特に目新しいものじゃない。

 

けれど、人口減で労働力不足の日本では他国とは事情が違って、人工知能やロボットの活用で社会にイノベーションを起こせるというはなるほどと思うところだった。

 

ロボットや人工知能というのはつまるところ省人化を進めることができる。少ない人で効率的に作業ができるというわけで、つまり、労働力が、雇用が確実に減る。

 

よくネットで言われる「スーパーのレジ打ちなんて人間のやる仕事じゃなかったんだよ。これからはもっとクリエイティブな仕事をしていいんだよ」というのは間違いではないのだろうけれど、みんながみんな何かしらの才能やスキルと持っているとは限らないし、なにより新たなスキル獲得のための時間と費用がない場合が多い。(あるいはその発想も)

 

イギリスで産業革命が起こったとき、蒸気機関はまず炭鉱の水を排出するために使われた。それまでは人間が(おそらくはバケツで)すくって運んで炭鉱外に出していた。これはものすごく時間とコストがかかる。効率的とも言えない。それが蒸気機関に置き換わり、それまで水を運んでいた人の仕事はなくなった。労働者は路頭に迷った。そういうわけで新しい技術というは労働者から激しい抵抗に遭う。これはいつの時代も同じ。

 

欧米で自動化をどんどん進めて思うように効率化を推進できていないのはそういう労働者の抵抗があるらしい。

 

一方で日本はというと、ただでさえ労働力が不足していてそれを補う移民を迎え入れるのにも消極的という事情があるのだから、ここで自動化を妨げる障害が他国に比べてないわけで、一気に自動化へ舵を切れるはずで、そうすれば生産性も劇的に上がるはずだ!と説く。

 

それで、やっぱり「そんなうまいこと行くものかね」って思うのも事実だと思うんだけど、経済というか、景気が良くなるときというのは、社会の雰囲気がイケイケになると投資が増えて消費も増えて好景気になるわけだから、社会の雰囲気を良くするのが、実は1番大事な戦略で政策なのかもしれない。本書を紹介した冒頭で「これできないと救いようがないよというニュアンス」なんていうことを書いたけれど、本書の語り口は辛辣ではなくて、あくまでポジティブで「できる!できる!」っていうCheerfulなものだったから。

 

とにかく、一読の価値は十分ある。というかデータの使い方とか魅せ方の勉強にもなるかと。